補足2  確率モデルに基づく制御の必要性

図3 2011年12月1日から2週間にわたる米国カリフォルニア州の風力発電量の推移[3]

 

なぜ確率モデルを考慮することが必要かについて例を用いて説明する。図3に示したのは、2011年12月1日から2週間にわたる、米国カリフォルニア州における風力発電量の1時間ごとの推移である。発電施設は州内に分散しており、最大で約2700MW程度の出力がある。図3より三つの特徴が読み取れる。

第一の特徴は、出力がランダムな挙動を示すことである。この確率的な不確定性のモデル化 については様々な先行研究が存在するが[4] ,[5]、その成果が制御 の研究には未だ十分に生かされていないのが現状である。そもそも確率的モデルに基づく制約条件付き最適制御の研究自体が発展途上にあるためである。

第二の特徴は、変動の幅と速度が非常に大きいことである。ほぼ無出力の状態から最大出力に近い2000MW近くまで極めて短時間で変化しうる。結果、急激な電力潮流の変化により、同期発電機の過負荷や電力網の過電流のリスクが発生する。

第三の特徴は、長時間ほぼ無出力の状態が続きうることである。図2のように、2011年12月6日から11日にかけて117時間に渡って最大出力の5%以下の状態が継続した。カリフォルニア州は日本の国土とほぼ同じ面積であることに注意されたい。たとえ風力発電所が地理的に分散していても、非常に低いがゼロではない確率で、任意の長さの期間、太陽光・風力からの電力供給がほぼ途絶える可能性がある。つまり、「最悪ケース」というものを定義することは不可能である。既存の制約条件付きロバスト制御手法は「最悪ケース」におけるロバスト性を保証することが主流であるが、そのような手法は適用できない。

このボトルネックを解消するためには、「最悪ケース」に基づく既存のロバスト制御ではなく、確率モデルに基づいたアプローチを取る必要がある。

 

 

[3] California ISOのデータより作成

[4] F. Vall´ee, J. Lobry, and O. Deblecker. “Impact of the wind geographical correlation level for reliability studies.” IEEE Transactions on Power Systems. 2007.

[5] D.J. Leith, M. Heidl, J.V.  “Ringwood. Gaussian process prior models for electrical load forecasting.”  Proceedings of the International Conference on Probabilistic Methods Applied to Power Systems. 2004.